当事者意識を持って仕事に取り組んでほしい。リーダーなら誰しも思うことなんですが、この言葉が呪いのように繰り返される現場って、ありますよねー(棒)。さて、今回は、仕事のスピードと当事者意識の関係性を考察したいと思います。私の観測によればこの2つは同じ根っこで繋がった概念であると考えられます。
仕事が速い人はなぜ速いのか。
あなたの周りにも、仕事が速い人が居ると思う。何か仕事を引き受けたかと思うと、速やかにある程度のアウトプットを出してくるタイプの人である。結論からいうと、こういう人たちは実はスタート地点が違う。あなたがゼロスタートするところを速い人たちは40%とか60%とか、そういったところからスタートしているのだ。
もちろん、全員が全員、すべての仕事のケースでこれが当てはまるとは言えないが、特にルーチンワークではない、何かを考えなければいけないような仕事でこのケースが多いと言える。単純な作業スピードで勝負しても辛いだけである。
どうやって高いスタート地点を得ているのか。
そんなのズルやん、きっと上司から特别な情報を得ているに違いない、などと思った方、半分正解、半分不正解。おそらくあなたと同じ情報に触れている人の中にもやはり速い人は居ると思う。要するに「要領が良い」に属するところかと思うが、まずこういう人たちは情報の捉え方、扱い方に圧倒的な違いがある。
例えばだが、いつか使える形ですべての情報を取り扱っていたりする。何かと関連づけて効率よく情報を整理している。過去の全く関係のないような情報との関連性まで深堀りした形で情報を覚えている。などなど、こうした工夫をされていることが少なくない。
仕事が速い人はコストをかけている。
それは教育によって得られたものなのか、というと、ちょっと違うところがある。例えば教育によってこういったノウハウを得たとして、それが生かされる環境にないと、そういった立ち振舞は難しい。それはどんな環境かといえば、そういった取り組みが評価される環境、あるいは批判されない環境ということになる。
つまり。仕事の成果に直接関係のない、情報の整理にどれだけコストを払えるかが肝になっている。それが批判されないこと。心理的安全性と言ってしまえば簡単だが、現実にこれを実現するのはなかなかに難しいだろう。
リーダーはメンバーの稼働の効率化を図るあまり、余計な作業、仕事に関係ないことはするな、とつい言ってしまいがちである。これが悪手となることがあり得るということだ。これを言ってしまうと、メンバーはリーダーに評価される仕事、あるいは明確に指示された仕事しかしなくなる。
当事者意識
翻って、当事者意識とは何か、というのを考えてみる。当事者意識を持って仕事に取り組む、とは、「責任を持ってやり遂げる」ことだと思っている方もいるかもしれないが、実はこれが微妙に違ったりする。
当事者意識を持つということは、当事者意識を持っている状態に対する定義であり、それを持って仕事を推進する行為に対する定義ではない点に注目してほしい。つまり当事者意識を持っている状態にあること。これが要件である。
それはつまり「ownership」で定義されるべきではないかというのが私の解釈だ。その仕事をやりきること、ではなく、正しくその仕事をコントロールし、場合によっては作業を止めることも含めて裁量を持ち、そのすべての結果に責任を持つこと。これが当事者意識ではないか。オーナーシップはただの責任感ではない。むしろ責任感を口にするのはリーダーの逃げの側面もある。
当事者意識と仕事のスピード
一見、仕事には直接関係のない情報の整理が次の仕事のスピードを上げる。これが当事者意識と関係するということだ。当事者意識がなければ、この情報の整理の効果が分からないし、そこにコスト投下できない。
つまり。当事者意識とは、その業務に対して必要なコストを払える覚悟であると言うことができる。
だから作業が速い人は当事者意識が高い。逆も真。当事者意識が高いから、払うコストがコントールできるし、払ったコスト(投資)を回収することもできる。この構図が分からないと、「あの人はズルしている」発想を脱却できない。
仕事の速さを分解すると、当事者意識が見えてきた
あくまでこれは自分が仕事が速いケースを分解して見えてきた知見なので、すべてのケースに当てはまるとは言い切れない。一方で、コスト=投資の概念を持ち込み、仕事をコントロールする意識を持つことが効果的なのは間違いないと感じている。
この構図がわかっていないと不幸なことが起きる。仕事に関係ないことをするな、というリーダーも、成果に直接繋がらない作業をしたがらないメンバーも、この構図にあてはめれば同罪ということになる。どちらかが割り切らないとこの壁は突き破れない。
良く「勝手にやっておく」っていう発言が出ることがあるが、これこそが当事者意識(リスク&コストテイク)であり、より高速に成果にたどり着く一つの手法であるという面を理解すべきと考えている。
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