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「信用貯金」の話

time 2020/07/03

リモートワーク全盛のこのご時世、「信用貯金」「信用貯蓄」と呼ばれる人と人とのつながりによって醸成される価値の希薄化を嘆く声も聞かれる今日このごろ。そもそもにおいてこの「信用貯金」とは何なのか、その真意と効果についての考察を記載します。

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『職業に貴賤なし』

どんな職業にも社会的役割と価値があるので、差別してはいけない。これは有名な言葉であり、まあ様々な解釈はあるところだが、概ね的を射た表現ではある。

さて、これを読み替えてみる。「あなたの仕事に、優劣はありますか?」つまり、重要な仕事とそうではない仕事というのがあるのか?という話だ。

仕事に求められる完成度について

ときおり部課長など役職者が「この仕事は重要ではない」「主業務ではない」などの発言をすることがある。これを聞いた担当者はどう思うかというと、「つまりそれは成果として評価されないから、適当にやろう」「手を抜いてやろう」と考える。ところが後になって、その仕事で手を抜いたことで失敗したり、怒られたり、場合によっては評価を落とされたりもする。なぜそんな不合理なことが起きるのか。

理由は簡単で、上司の言う「重要ではない」は決して手を抜いてよいという免罪符ではないということだ。つまり仕事としての完成度は当然100%が求められるが、その仕事について「それ以上は求めていない」と言っているだけなのだ。

当たり前の話だが、我々が仕事をする上で、そのアウトプットに求められる完成度は100%ではない。120%、150%が普通である。いや、そんなの、給料もらっているだけの働きをすれば良いのではないか、つまり100%以上のパフォーマンスを出すなんて、不釣り合いじゃないか、と思われるかもしれない。だが残念ながらそれは甘い。

まず、100%の仕事を続けるだけだと、それはつまり現状維持だ。時間の経過に従い、その100%は”経年劣化”する。そうすると、給料には下げ圧力がかかる。つまり、現状維持、100%のパフォーマンスを出し続けることは、実は価値が棄損していくということなのだ。

そして当然、100%の成果を出し続けるだけでは、給料は上がらない。期待値も上がらないので、新しい仕事も与えられない。これが現実である。

だから「重要ではない」仕事でも、100%の完成度が求められるのだ。手を抜いたら、それは未達なのである。

重要ではないからこそ、本気出す

じゃあそんな重要ではない仕事にどう向き合うべきか。高い評価が得られないであろう仕事にコストをかけるのは馬鹿らしいと誰もが思うところだが、ここで発想の転換が必要になる。重要ではないからこそ、本気を出す、という考え方だ。

なぜか。理由は簡単で、「信用貯金の足しになる」からだ。

信用貯金とは、その人が持っている仕事上の信用の度合いで、例えばこの人に任せたらこれくらいやってくれるだろう、この仕事をまかせて安心だ、という信用パラメーターである。これを貯めることで、より大きな仕事を依頼されたり、その成果についてもより高い評価のバイアスを受けることが可能になったりする。

ではこの「信用貯金」はどのように貯めれば良いか。ここで重要なのが、つまり「重要ではない仕事」でのパフォーマンスだ。

どんな人が信用されるかを考えれば、この理由は理解できるだろう。結局、信用が高い人というのは、「どんな仕事に対しても」「誰からの依頼に対しても」均質的で高い成果を出す人なのだ。その仕事の重要度や、高い評価を受けられるか否かなんて関係ない。そんなことで仕事の選り好みをする人をあなたは信用できるだろうか。

だからこそ重要ではない仕事でも本気を出すべきなのだ。加えて、重要では無い仕事で本気を出すことには、もう一つ大きなメリットがある。それは「期待値が高くない」ということだ。

より高い評価を受けるためには、より高いハードルを超えることも重要ではあるが、そのハードルをさらにどれだけ高いレベルで超えていくか、つまり完成度や達成度の期待値からの上積みの高さが重要になる。より大きく上積みするには、より高く飛ぶか、より低いハードルを選ぶか、といった選択が必要になる。そして最も上積みを大きく見せる方法が、他でもない、低いハードルを全力で高く飛ぶ手法である。

だからこそ、重要ではない仕事ほど、本気で取り組むべきなのだ。そしてその成果が、結果「信用貯金」として、新しい仕事や成長のチャンスをもたらしてくれるのだ。

仕事を自己投資と考える

つまり信用貯金とは「自己投資」に他ならない。自分自身の仕事のケイパビリティとして、アセットとしての価値があるということだ。

重要ではない仕事、あるいは誰でもできるような難易度の低い仕事をやらなければならないとき、それを「やるだけ無駄」「自身の成長に繋がらない」などと短絡的に見るのは勿体ない。それを気持ちよく引き受けて、期待以上のスピード、品質で仕上げることは、間違いなく、信用貯金として将来の自分の価値に反映される。

仕事とはそういった投資対象としての性質をもったものであると考えるべきである。

成果が上がらないのは仕事が来ないから?

ここまで書いても、「自分の評価が上がらないのは自分に高い評価が得られる仕事がアサインされないから」「偉くなって高い裁量が得られれば高い成果を上げられる」と考えている人が居るかもしれないので、あえて書いておく。

じゃあどうして、あなたが「高い成果を上げられる能力を持っている」と信用できるのか。機会さえあれば、と言う人もいるが、残念だが仕事は博打ではない。何らかの根拠に基づいて、それこそロジカルに、ビジネス的な判断によって成されるのが仕事でありひいては企業活動だ。

どこまで言っても、仕事をする側がその能力と可能性を「信用貯金」などの形で、チームや会社などのコミュニティに開示していかなければ、コンセンサスを得ることはできない。それには時間、実績、あるいは目に見える根拠が必要なのだ。

そしてこのルールに反して、信用のない人に重要な仕事がアサインされれば、それこそコンプライアンス・ガバナンスの崩壊として批判の対象となるし、成果も上がらず事故が起きる。当然の話である。

「ボーナスステージ」は存在するが

ではこの「信用貯金」はコツコツと時間をかけて積み上げないといけないのか。それこそラッキースケベのような形で特別なプロジェクトが降ってわいてくることも無いとはいえないが、現実はそんなに甘くない。

だが、「ボーナスステージ」は存在する。人生には、この「信用貯金」を圧倒的なスピードで積み上げることができる特別な期間があるのだ。

端的にいえば、それは「環境が変わった瞬間」である。具体的には(1)異動直後(2)転職直後(3)組織変更直後(4)就職直後など、仕事環境が変わるタイミングである。こういったタイミングにおいて、信用貯金はリセットされ、圧倒的なスピードで積みあげることが可能となる。まさにボーナスステージだ。

ただし、このボーナスステージには気を付けなければならないことがある。当然だが無限には続かないこと、そして、うまく活用できないと逆に信用を落として終わる可能性があるということだ。

信用貯金のボーナスステージは、つまり期待値のハードルが低い(不明瞭な)期間であるということだ。その期間は、信用を積むのが容易であるという半面、その低いハードルすら超えられないと、一瞬で期待が失望に相転移してしまう。

ここで前述した「重要ではない仕事」という概念が関係してくる。異動して間もないメンバーに与えられる仕事は、どうしてもクリティカルなものではなく、ある意味、重要ではない仕事になりがちである。社会人経験の長い人ほど、この実情は理解できてしまうので厄介だ。ここで手を抜くと、結局、高い成果が上げられない人という烙印を受けることになり、信用の失墜という悲惨な結果になる。これには留意してほしい。

真面目に仕事をしたほうがやっぱり得

結局のところ、「どんな仕事も真面目にやりましょう」というのが結論なのだが、この背景についてロジカルに認識するのが難しい面もあるので、このように文章にしてみた。

信用が高い人というのは、「どんな仕事に対しても」「誰からの依頼に対しても」均質的で高い成果を出す人である。この点を念頭において、業務に従事してほしいと思う。

・・・・と、7月からジョインしてきたメンバーに説明しようと思って考えていた。

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