会社では、私も比較的シニアな側に属するようになり、仕事の相談やレビューを受ける機会が増えました。そうしていると、人によって相談に来るタイミングがかなり違うことに気づきます。
まだ仕事の方向性も固まっていない段階で相談する人もいれば、かなり作業を進め、成果物がほぼ完成してから相談する人もいます。最初は単に仕事の進め方や性格の違いなのかと思っていましたが、相談を受ける立場から見ていると、それだけでもなさそうです。
相談を何のためにするものと考えているのか。そこに違いがあるように感じています。
私は、相談は早いほうがよいと思っている
私はどちらかといえば、相談は早い段階でしたほうがよいと考えています。ただし、これは「問題が大きくなる前に報告しよう」とか、「報連相は早めにしよう」という話とは少し違います。
私が早い相談に期待しているのは、その仕事の目標値を上げることです。困ったときに助けてもらうためだけではなく、当初想定していた成果よりも上を目指すために相談を使えると考えています。
仕事を始めるときには、依頼された内容や、その時点で理解している情報をもとに、ひとまずゴールを置きます。しかし、そのゴールが本当に妥当なのかは、最初から分かるとは限りません。
そもそも問題の捉え方が少しずれているかもしれませんし、別の方向から考えれば、もっと大きな成果を狙えるかもしれません。調査を始める前に、別の仮説を置いたほうがよい場合もあります。
自分一人で考えていると、どうしても最初に置いた前提の中で仕事を進めることになります。そこで早い段階で誰かに相談すると、自分とは違う視点が入り、最初に考えていたゴールそのものが変わることがあります。
まだ作業量が少ない段階であれば、方向を変えることも難しくありません。逆に、かなり作り込んでから前提のずれが分かると、それまでの作業が無駄になるだけでなく、修正にも大きな手間がかかります。
私にとって相談は、仕事を完成させるための補助的な手段にとどまりません。成果の方向や幅を変えるためにも使えるものだと思っています。
遅く相談する人にも、その人なりの理由がある
一方で、相談が遅い人は、単に一人で仕事を抱え込んでいるわけではないと思います。任された仕事なのだから、まずは自分でしっかり考えるべきだと思っているのかもしれません。
何も整理できていない段階で相談するのではなく、自分なりの考えや案を作ってから持っていくべきだと考えている可能性もあります。これはこれで、仕事に対する一つの誠実な姿勢です。
相談すれば、相手の時間を使います。相談を受ける側は、仕事の背景を理解し、現在の状況を把握し、何が論点なのかを考えなければなりません。
話がまだ整理されていなければ、相談を受ける人の負担はさらに大きくなるように見えます。そのため、もう少し自分で整理してから相談しようと考えるのは自然です。
相手も忙しいのだから、簡単に相談してはいけない。何も考えずに聞きに来たと思われたくない。最低限、自分の意見を持ってから相談すべきだ。
こうした意識が、相談を遅らせている場合もあるでしょう。相談が遅い背景には、相手に余計なコストをかけたくないという配慮があるのだと思います。
したがって、相談が遅いことを、積極性がないとか、コミュニケーション能力が低いと単純に評価するのは違う気がします。むしろ、相談に伴うコストをできるだけ自分で引き受けようとするからこそ、相談が遅くなっている場合もあります。
相談する側が想像する負担と、受ける側の感覚は違う
ただ、ここで少し難しいことがあります。相談する側が想像している負担と、相談を受ける側が実際に感じる負担は、必ずしも同じではありません。
相談する側は、まだ整理されていない話を持ち込めば、相手に大きな負担をかけると考えているかもしれません。しかし、相談を受ける側には、そうしたコストを引き受けられる人もいます。
私自身も、比較的そのタイプなのだと思います。まだ話がまとまっていなくても、これまでの経験から、何を先に考えたほうがよいのか、どこが論点になりそうなのかを一緒に整理できる場合があります。
むしろ、かなり仕事が進んでから大きな方向修正をするよりも、早い段階で少し話を聞くほうが負担は小さいことがあります。最初に10分話しておけば避けられたずれを、完成後に何時間もかけて直すこともあります。
相談する側は、相手に負担をかけないように、できるだけ自分で進めようとする。一方、相談を受ける側は、そこまで進める前に話してほしかったと思っている。
双方とも仕事を良くしようとしているのに、相談のタイミングだけがすれ違ってしまいます。これは、相談によって発生するコミュニケーションコストを、誰がどこまで引き受けるのかについて、認識が合っていない状態なのだと思います。
この認識を事前に合わせられればよいのですが、現実にはそこまで明示的に話し合われることは多くありません。「いつでも相談してください」と言われても、本当に未整理な状態で相談してよいのかは分かりません。
実際に相談してみたら、「もう少し考えてから持ってきて」と言われることもあります。逆に、十分に考えてから相談したら、「なぜもっと早く相談しなかったのか」と言われることもあります。
これでは、相談する側も判断に迷います。相談のタイミングは、相談する本人の性格だけで決まるものではなく、相談を受ける側がどの段階から関与するつもりなのかによっても変わります。
相談するタイミングによって、得られるものが変わる
今回考えたかったのは、早く相談する人が正しくて、遅く相談する人が間違っているという話ではありません。仕事の性質によっては、まず自分で考えたほうがよいものもあります。
前提やゴールが明確で、手順もある程度決まっている仕事であれば、担当者が自分で進めたほうが速いでしょう。まだ自分でほとんど考えていない状態で、何でも相談相手に判断してもらおうとすれば、単に仕事を相手へ移しているだけになってしまいます。
一方で、正解がはっきりしない仕事や、目的自体を考えなければならない仕事では、早い相談に意味があります。新規事業、企画、調査、業務改善などは、最初に置いた問いによって、その後の成果が大きく変わります。
こうした仕事では、自分で正しいと思った方向に深く進むことよりも、早い段階で方向そのものを確かめることに価値があります。相談するタイミングと、そこで扱う内容を整理すると、おおむね次のようになります。
| タイミング | 相談する内容 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 着手前・初期 | 目的、前提、評価基準、方向性 | ゴールと方向を合わせる |
| 中間 | 仮説、選択肢、発見した問題 | 成果の上限を引き上げる |
| 完成前 | 抜け漏れ、誤り、伝わり方 | 品質を確認する |
着手前や仕事を始めたばかりの段階で相談すれば、そもそもの目的や前提、どのような状態を成果とするのかを確認できます。ここでずれを修正できれば、その後の作業全体が無駄になることを避けられます。
少し作業を進めた段階で相談すれば、自分が置いた仮説が妥当なのか、ほかの選択肢がないか、途中で見つかった問題をどう扱うかを一緒に考えられます。この段階では、最初に想定していた成果を広げたり、目標値を上げたりできる可能性があります。
完成に近い段階で相談すれば、誤りや抜け漏れ、相手への伝わり方を確認できます。一般に「レビュー」と呼ばれているものは、この段階の相談を指すことが多いように思います。
同じ相談でも、タイミングによって得られるものは違います。相談が遅い人は、ある程度自分の仕事を作ったあとで、内容を確認してもらうことを相談だと考えているのかもしれません。
一方、早く相談する人は、何を目指すのかを考えるところや、途中で成果を広げるところから相談を使っています。どちらか一つに決める必要はなく、仕事や状況に応じて相談するタイミングを変えればよいわけです。
AIへの相談にも、普段の癖が出る
今は、人だけでなくAIにも相談できるようになりました。AIの使い方を見ていても、人への相談と同じような違いが出ているように感じます。
自分で文章や資料を作り、ある程度完成してからAIにレビューを依頼する人がいます。誤りがないか、分かりにくいところはないか、足りない論点はないかを確認する使い方です。
これは分かりやすく、実用的な使い方でもあります。一方で、まだ仕事の形ができていない段階からAIに相談する人もいます。
そもそも何を調べるべきなのか。依頼された仕事の目的をどう捉えるべきなのか。最初にどのような仮説を置けばよいのか。
ほかの見方はできないのか。成果をもう一段上げるとすれば、何を追加できるのか。こうした段階からAIに話を投げると、自分一人では置かなかった問いや選択肢が出てくることがあります。
もちろん、AIが出した方向が正しいとは限りません。AIは、社内の事情や過去の経緯、仕事を依頼した人の意図を十分に理解していないこともあります。
もっともらしいものの、現場では使えない案を出すこともあります。それでも、完成後のレビューだけではなく、仕事を始める前や、方向を考える段階でも相談できることは、AIの大きな使い道だと思います。
人への相談では、相手の時間や負担が気になります。その点、AIには、まだまとまっていない考えでも投げやすく、何度話をやり直しても、人ほど遠慮する必要はありません。
そのため、普段は相談を遅らせがちな人でも、AIを相手にすれば、早い段階で相談する使い方を試しやすいと思います。ただし、AIに相談すれば、人への相談が不要になるわけではありません。
AIには考えを広げてもらい、組織の事情や判断が必要な部分は人に相談する。逆に、人から与えられた方向性を、AIとの対話で具体化していく。そうした使い分けもできるはずです。
AIを最後のレビューにだけ使うのか、まだ何をするか決まっていない段階から使うのか。ここにも、その人が普段、相談をどのようなものとして捉えているかが表れるのではないかと思います。
相談のタイミングを選べるようにしておく
私は、仕事の成果を大きくするためには、早い段階で相談する選択肢を持っておいたほうがよいと考えています。ただし、何でも早く相談すればよいとは思いません。
自分で考えるべき仕事もありますし、相談相手の状況や役割によっては、ある程度整理してから話したほうがよいこともあります。重要なのは、相談には決まったタイミングがあるわけではないと知っておくことです。
ある程度完成してから相談する方法しか知らなければ、仕事の前提や方向性を変えられる機会を逃すことがあります。反対に、すぐに相談する方法しか持っていなければ、自分で考え、判断する機会を失うかもしれません。
今の段階で相談すると、何が得られるのか。自分で考え続けることと、誰かの視点を入れることのどちらが、より良い成果につながるのか。相談することで発生するコストを、相手はどこまで引き受けられるのか。
人に対しても、AIに対しても、相談のタイミングには複数の選択肢があります。早いか遅いかを一律に決めるのではなく、何のために相談するのかによって選べるようにしておく。
まずはそれだけでも、仕事の進め方は少し変わるのではないかと思います。

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